取扱説明書の作成方法と注意点

 日本には、いわゆるPL法と呼ばれる製造物責任法があり、製品の欠陥による損害に対する責任が定められていて、海外の製品にあるような、イラストだけだったり、説明文の少ないすっきりした取扱説明書を作成することはできません。製品に欠陥があるというのは論外ですが、少なくとも製品の欠陥ではなく、事前説明が足りなかったことによる損害の発生は避けたいところです。
「このぐらい、言わなくてもわかるだろう」「これは常識の範囲でしょう」という思い込みは捨て、例えるなら、サザエさんのような、この世に存在し得る「究極のうっかりさん」のことを思い浮かべながら、読み手の立場になって、組み立てや操作を間違えないよう、誤解を生みにくい文章を、丁寧に、詳しく、わかりやすく作成するよう心掛けましょう。ここでは、取扱説明書を作成方法について、順を追って説明していきます。

取扱説明書の作成方法

[1] 取扱説明書の仕様を決めます。
[2] 取扱説明書の構成を考え、絵コンテを作成します。
[3] テキスト・図表を作り込みます。
[4] 文章を見直します。

[1] 取扱説明書の仕様を決めます。

 取扱説明書を作成する際、一番最初に考えるべきことは「仕様」です。カラー写真をふんだんに取り入れ、充実したテキストで説明した取扱説明書はわかりやすいかもしれませんが、製品を構成する部品の一つとしてコストがかかりますし、また、サイズの小さい製品に対して大きなサイズの用紙を使用すると、パッケージに入れる作業がしにくいといった不具合が出る恐れもあります。
 そのため、できるだけコストを抑えるべく、あらかじめ印刷物のサイズやページ数などを決めておき、それに収まるように配置していくことがより望ましい形だと考えます。また、印刷工場がカラー印刷や両面印刷に対応していなかったりすることがあるので、解像度の低い(印刷の荒い)、白黒印刷でもわかるような内容、説明図などにしておいたほうが無難なケースもあります。


[2] 取扱説明書の構成を考え、絵コンテを作成します。

 取扱説明書を作成するにあたり、はじめに、どのような順序でどのような説明をするかを考えます。具体的には、目次+説明文や注意書き+挿入する説明図などを書き出し、つぎに各要素をどのページのどのあたりに配置するかを検討、絵コンテを作成します。
 まだこの段階では、きちんとした文章や図は必要ありません。手書きのメモやイラストを実際に使用するサイズの白紙に切り貼りするなどして、絵コンテの内容を詰めていきます。
 私の場合、注意文や説明文をメモ帳(テキストエディタ)で入力しておき、図は手書きイラストや写真の切り抜きを使用することが多いです。文章をメモ帳で作成しておくと、Illustratorなどに入れ込む際、コピペが使えるのでとても作業が楽になります。また、文章も自分で練ったものがそのまま使用できますので、自分の意図がより伝えやすいと感じます。


[3] テキスト・図表を作り込みます。

 作成した絵コンテに合わせて各説明文や説明図を仕上げ、レイアウトを調整します。説明や説明図が不足している場合は追加し、見やすいように要素を配置したり、余白を追加したりします。
 注意書きについては、必要かどうか判断に迷う項目までとにかく書き込んでおき、後で見直したときに、項目や文字数を削ったり他の文章と合わせて効率的に伝えるようにしたりする工夫を検討します。失念していて記載しないのと、検討した結果、あえて記載しないのとでは大きな違いがあります。​

[4] 文章を見直します。

 一通り完成したら、じっくりと読み直しましょう。自分の書いた文章の通りに製品を操作・作業してみて、本当に意図した動作をするか、完成品が出来上がるかなどを試してみましょう。
 ここで意外と難しいのが、「文章の通りに」操作・作業してみることです。文章を書いた本人には先入観があり、きちんと「文書の通りに」操作・作業するのが難しかったりします。時間があれば、他のことをした後や翌日に見直すと、頭がリセットされ、より良いチェックができると思います。時間が無い場合でも、見直しを始める前に他のことをして、一度、取扱説明書の作成作業から離れることをお勧めします。もしも頼める相手がいるのであれば、その方に操作・作業してもらうと、より客観的に内容を見直すことができるでしょう。
 文章を見直す際は、できるだけ客観的に自分の文章を眺めてください。自分ではこう解釈するけど、「こう(誤った)解釈する人がいるかもしれない」と考えられる文章はできるだけ避けましょう。それはフラグです。メールの文章や実験方法の説明などでもそうですが、「まさかこう読み取る人は居ないよね」と思ったときに限って、そのまさかが起こることがあります。
 上司や他の人にチェックしてもらえるからと、チェックをおろそかにする人も見受けられますが、他人はあてにせず、自分のところで最後まで仕上げるくらいの心持ちでいたほうが、より品質の高いチェックを行え、よりわかりやすい取扱説明書ができると考えています。


​まとめ

 取扱説明書は、サザエさんのような「究極のうっかりさん」のことを思い浮かべながら、読み手の立場に立って、組み立てや操作を間違えないよう、誤解を生みにくい文章を、丁寧に、詳しく、わかりやすく作成するよう心掛けるようにしましょう。 

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