Product 商品開発のプロセス(2) 商品開発 編
基本設計・デザインから試作・評価、量産の準備・立上げまで
商品開発のプロセスにおいては、
(1)基本設計~デザイン~見積~提案
(2)試作~評価~改良
(3)発注~量産準備~量産立上げ
を行います。具体的なステップは下記のとおりです。
■基本設計~デザイン~見積~提案
●基本設計
●外観デザイン
●見積仕様書の作成
●商品企画提案書の作成
■試作~評価~改良
●試作、評価
●試験実施、性能確認
●改良
■発注~量産準備~量産立上げ
●商品仕様書の作成
●印刷原稿(取扱説明書、パッケージなど)の作成
●検査項目表の作成
●初回出荷前検査
■基本設計~デザイン~見積~提案
●基本設計
進行する商品企画アイデアが固まったら、それを実現する方法を考えます。サイズや構造、材質など、現実化する方法を検討します。
現実化する方法は一つとは限りません。図面描くことも大事ですが、簡易的に試作できるのであれば、実際に作っていじってみると、頭の中の想像とは違ったことが見えてきたりすることもあります。
●外観デザイン
どういったサイズや構造にするのかといった考えがまとまり、図面化することができたら、外観デザインを加えます。見た目は大事ですが、使い勝手を考慮したサイズや性能を成立させる構造など、外してはいけないポイントを忘れずに、外観の良い売れそうなデザインを考えましょう。
ただし外観デザインは、多くの人に受け入れられる最大公約数的なデザインや好みが分かれるデザインなどがありますので、「かっこいい」と思っても、それがどのくらい人に受け入れられそうか、客観的に見る目を養いましょう。
●見積仕様書の作成
素材や材質、外観デザインなどがまとまったら、生産する工場に見積を取ります。場合によっては複数の工場に相見積(あいみつもり、あいみつ)をとることもあるかもしれません。
商品については、図面や材質を説明するだけでも見積できることもありますが、新しい商品企画アイデアだったりすると相手に伝わらないこともありますので、元になる商品を紹介したり、簡易的に試作したものを提供したりして、できるだけ正確に作りたい商品の具体的なイメージが伝わるよう努めましょう。
ここでは、商品そのものの仕様も大事ですが、パッケージや運搬するためのダンボールなど、できるかぎり、わかるかぎり詳しく要望を伝えることが大切です。工場によっては、付属品を入れる小さなビニール袋1枚の有無で値段が変わることもあります。
●商品企画提案書の作成
詳しい説明は後にまわしますが、試作品が出来上がったら評価し、自分の意図する商品になっているかをチェックします。
チェックの結果、ある程度の仕上がりになっていて、商品として成立しそうな見通しが立ったところで提案の準備をします。提案先は会社によって違います。取引先バイヤーさんに採用されたら(されそうになったら)商品化、社内会議で決まったら商品化、ワンマン社長が決めたら商品化(!)といった色々な判断方法が存在します。
提案方法としては、提案書を作成するのが一般的だと思われます。提案の方法にマニュアルはありませんが、個人的には紙1枚に情報をまとめるのが効率的だと考えています。
大きな画像とキャッチフレーズや簡単な商品説明、カタログなどに記載する仕様などを見やすく、コンパクトにまとめます。補足資料として、提案する商品のパッケージイメージや仮想のカタログなどを作成しても良いでしょう。
■試作~評価~改良
●試作、評価
試作については、作り始める前にその時点で最高、最終の状態にしておきましょう。面倒臭がって、次の試作のときに修正すればいいやという考えは捨て、その都度、最高の試作を上げるよう心掛けましょう。なぜなら、試作をしてみると、想像していなかった不具合が発生したりして、そちらにリソースを割くことになったりすることが多いからです。まだ見ぬトラブルに備え、一回一回の試作を精一杯利用しましょう。
また、試作を開始したら、よっぽどのことがない限り、途中で変更するのは止めましょう。作る側に2度手間3度手間を強いることになりますし、それによってモチベーションが下がったり、「どうせまた変更するんだろう」と、なかなか動いてくれなくなったりする恐れがあるからです。依頼する相手も人間なのだということを忘れず、相手の気持ちを考えましょう。
試作が出来上がったら評価です。まずは、自分のプランどおりの外観やサイズ、構造になっているかを確認しましょう。機能、動作についても、意図した操作で動きをするかをチェックします。
●試験実施、性能確認
試験の実施については、あらかじめどの試験とどの試験をするかを決めておき、試験項目表などにまとめておきましょう。
試験項目表にまとめておけば、試験実施の漏れが無くなりますし、試験項目ごとに他人に依頼することもできるようになります。破壊を伴う試験がある場合、それ以外の試験を先に終わらせてから実施するなど、順番・段取りに気をつけましょう。この順番・段取りを精度高く設定できるようになれば、試験につかう試作品のムダが無くなり、試作する数量が減り、コスト的にも環境的にもより良い商品開発ができるようになります。
●改良
試験評価の結果、不具合や懸案事項が出てきたら、「不具合リスト」にまとめましょう。このリストに項目を出し切ることができれば、検討漏れを防ぐことができますし、頭に記憶しておくという脳のリソースを食うことも無くなります。リストの項目を担当者に分担すれば、そのまま進捗の管理表として使うこともできます。
■発注~量産準備~量産
●商品仕様書の作成
発注する商品の仕様について、わかる範囲でまとめて記載します。気になることや注意して欲しいこと、間違えそうだと思えることなどは何でも書いておくことをオススメします。
記憶しておいても、他の業務のことを考えたら忘れてしまうことも多いですし、仮に量産で間違ってしまった場合、仕様書に書いてあれば、それを根拠に工場との交渉を有利に進めることができるようになります。
●印刷原稿(取扱説明書、パッケージなど)の作成
「取扱説明書の作成方法と注意点」の頁でも触れましたが、文章は客観的に見直し、誤字はもちろん、誤解を生みそうな表現なども避けるようにしましょう。
Illustratorで作成する場合は、アウトライン化を忘れずにします。
本印刷の前に校正刷りをチェックします。基本的には現物を送ってもらって確認しますが、箱が大きい場合や急いでいる場合などは、画像を送ってもらってチェックすることもあります。
データで入稿しても、校正刷りなどを見ると、自分たちの都合の良いようにデータを勝手にいじって上げてきたりすることもあるので、チェックは入念に行ってください。色については、よっぽど本物と違わない限りはOKを出し、先に進めることをオススメします。商品の色を調整するなどの場合は、色見本のチップや参考になる現物などを提供して調整してもらうのが近道です。
●検査項目表の作成
現地で慌ただしくしている前後に、冷静に商品をチェックするのはとても難しいので、あらかじめ何をチェックするかを検討しておき、チェックリストにまとめておきましょう。いつも当たり前にチェックしている項目はまとめてしまっても良いですが、商品特有の機能や新機能などについては、別項目にして、どんな確認方法で何を確認するのかといった内容を記載、もしくは別添しておくと良いでしょう。また、商品の型番やJANコードなども記載しておくと、いちいち仕様書などに戻って確認するといった手間が省けます。
●初回出荷前検査
検査項目表に基づいて、量産した商品をチェックし、工場から出荷しても大丈夫そうかを判断します。
チェックについては、人間のすることなので曖昧な部分が多いです。そのため、効率的で精度の高いチェックができるようになるには、ある程度の経験が必要だと思います。チェックの基準ですが、教科書的には「●平方cmの中に傷が●個以内」とか、「表面なら●個、裏面なら●個」といったものになり、工場に要求とかチェックを依頼する場合はこういった表現が必要でしょう。ただし、自分がチェックする場合も同様にやっていたら、時間もかかりますし、基準を満たせず出荷できないといったことになる可能性が高いです。
ではどうすれば良いかというと、「自分がお客さんになり、お店でこの商品を見ている」と想像します。「ここにこんな傷があるから買わない」「ちょっと細かい傷が付いているけど、これぐらいなら買っても良いかな」といった感じで評価を行い、その判断でOKかどうかを決めます。はじめは判定に迷うかもしれませんが、徐々に慣れてきて、パッ見の感覚で瞬時に判断できるようになったりもします。また、見落としがゼロとは言えませんが、外観の不具合で返品されるケースはイレギュラー以外ほとんど無くなります。
チェックする項目については、「注意して、次回の生産から修正」する項目と「致命的欠陥のため修理が必要で出荷できない」といった重要度を設定し、それぞれ●個チェックして、■個以上あったらダメといったルールを定めておきます。もちろん、ちゃんとした規格もありますが、人手が少ないと現実的でない場合があります。例えば、2個を見て、2個とも問題なければOKにする。もしも不具合があれば、もう2~3個(計5個程度)チェック、それでもダメならもう2~3個(計10個程度)見るといったルールを作るというやり方もあります。